2023年6月2日金曜日

ジョセリンとの交流に思う、サネの奨学生事業の価値

 27日は総会の後で現在日本に留学中の元奨学生でJICA事業でスタッフとして活躍したジョセリン・コヤゴとの交流がありました。

ジョセリンは今の自分があるのは、まず母のおかげですとお母さんとの写真を示しながら話しました。お父さんも兄弟もいないため、母一人子一人の生活で母娘のつながりには強いものがありました。けれども、農業を学びたいと国の奨学金を得てホンジュラスに留学し、母娘は離れて生活をするようになりました。厳しいホンジュラスでの大学生活を経て農業技師となって帰国。その後JICA事業の現地スタッフとなってサネの活動に参加することになりました。この時の学びもベースとなってアジア学院への留学を考えるようになったのでした。

彼女がサネの奨学生だった頃の文通相手(マドリーナ)は雛形さんという女性でした。雛形さんは手紙の交換を通していつもジョセリンのことを思いやり、彼女の成長を願ってきました。彼女が自分の好きな道を歩めるように、そしてその中で少しでも社会貢献ができる仕事に就けるようにと手紙の中で語りかけてきました。一方で彼女がお母さんから精神的に自立していけるようにということも常に願っていました。卒業後も間隔は開いたものの手紙交換は続き、雛形さんは常に彼女の成長を見守っていました。そしてとうとうこの日二人は直接会うことができたのです。

*私(杉田)は偶然にもこの二人の手紙交換を、翻訳者としてやり取りの全てを見守ってくることができました。サネの翻訳ボランティアは表に出ることはない黒子でありながらもこうした人生の立会人になれるのです。幸せなことです。

アジア学院での学びについても彼女は語りました。3年間のJICAの事業を通して、一つのことを成し遂げるのは一人の力ではなく、みんなの協力が大事なんだと学んだこと。だからこそアジア学院で学びたいと思うようになったことーアジア学院は何よりもチームワークを大事にし、一人一人が農村で活躍するためのリーダーシップを育てることを目標としていますー、4月からの日々の研修(朝起きてから夜寝るまでの全ての生活が研修なのです)ですでに多くのことを学んだそうです。彼女の顔は生き生きと輝いていました。将来はエクアドルに帰って地域の発展のためにいろいろなことに挑戦していきたいと夢を抱いています。

写真は雛形さんとジョセリン。中央は当日通訳を務めてくださった受田理事です。


ジョセリンは最後に右の写真をみんなに見せました。今年の春アジア学院で撮った写真だそうです。そして『日本の桜を見ることは、私の長い長い間の夢でした』と語った途端に溢れる涙。『桜が見られてとても嬉しかったです。でも、今日ここにきて、私が本当に見たかった、会いたかったのは桜よりも、ここにいらっしゃる皆さんだったとわかりました。私を長い間支援してくださったこと、私を信じてくださってありがとうございます』会場全体がとても温かな感情に包まれ、涙、涙の瞬間でした。サネの奨学生事業の良さをみんなが感じることができた日でした。
サネの奨学生事業は気の遠くなるような時間と手間をかけて一対一のお付き合いを積み重ねていきます。翻訳者の翻訳作業、奨学生事業担当スタッフの現地との打ち合わせや文通作業、文通相手の皆さんの毎月の手紙を通した交流といった地味な作業が長い場合には6年間継続するわけです。それが一人の子どもにどれほどの影響を与えられるのか、それはわからないのですが、これからもこの努力が続くのでしょう。私たちがこの活動を通して得られるものもまた大きいと感じた1日でした。

0 件のコメント:

コメントを投稿