2021年7月31日土曜日

9月の新学期に備えてーアンデスの山間部の学校に手洗い場を!




エクアドルは、2020年3月以来対面授業ができなくなって以来、ほとんどの学校で、生徒が来られない状態で今年度も終わってしまいました(7月に年度が終わります)。新年度は9月に始まりますが、政府は並行授業(週に何回か学校で授業を行う)を始めたいと考えているようです。

私たちがJICAの委託で、学校菜園と学校給食の実施を通した子どもたちの学校生活改善事業を行なっているのは、アンデスの山間部にあるカンガウア地区の5校とオルメド地区の1校の合計6校です。この地域はエクアドルの中でも貧困率(2010年の国際調査ではカンガウアの貧困率は92%でした)が高く、栄養不足の子どもが多い地域です。学校が始まったら栄養不足の子ども達が登校してくると予想されます。こうした子ども達に学校菜園の野菜と給食をできるだけ早く提供したいと私たちは願っています。6校中の3校は先生方も熱心で休業中も活動を途切らせることはなかったのですが、残りの3校は先生方がやっと学校に戻ってきた状態です。そこで、私たちは現在コロナ対応追加事業をこの3校を対象にしてJICAに申請をしています。追加事業は消毒剤の提供、子ども達への衛生教育、そして全ての保護者に向けた給食実施のための講習会です。

その前に、まず、衛生的で効果的に使える手洗い場を設置したいと彩の国さいたま国際交流基金に申請をしました。これは、上記の事業が遅れている3校(カルロスアンドラーデビセンテ校、ルイスウンベルトサルガド校、グスタボアドルフォベッケル校。いずれも生徒数が200人〜250人)に各校3ヶ所ずつ5つの蛇口がついた手洗い場を設置するというもの。今の手洗い場は、あっても蛇口が盗まれてなくなっている、清潔でない、蛇口の位置が高すぎたり遠すぎて小さな子ども達は使えない、場所が悪い、などの理由で使い物にならないものが多いのです。

右上の写真はカルロスビセンテアンドラーデ校の現在の手洗い場です。下の学校の図の青で示されているのが現在ある蛇口の位置です。図の右上、トイレの裏に設置されています。蛇口の位置が高くて使いづらく、また、トイレの裏の不便な場所にあることがわかります。注:bañosとあるのがトイレ 


赤い印が新しくつけようとしている場所です。矢印は生徒が登校してくるところです。学校に来たら手を洗い、教室の近くで食事の際に手を洗えるように考えられています。


上の写真が設置予定の手洗い場と同じタイプのものです。

この事業の予算は約40万円。この内、埼玉県には約20万円を申請しています(半額申請が決まりとなっています)。ご覧のようにほとんどが手洗い場そのものにかかる金額です。

事業予算合計         393,400

(内 訳)

1派遣諸費    JICA負担のため計上せず

2事業費(原材料費)  339,900

3事業費(通信運搬費)  31,500

  (4) 人件費        22,000

   国際協力基金申請額        196,700円(半額)

残りの20万円をSANEが用意しなくてはなりません。ぜひ、皆さんのご寄付をよろしくお願いいたします。



2021年7月29日木曜日

卒業生の今(シリーズ第1回)

 サネは設立以来32年目を迎えています。この間に多くの奨学生が社会に巣立っていきました。そして、その中の何人かは現地のカウンターパートであるソハエのメンバーとして後輩のサポートをし、また、高い専門性を持って事業担当スタッフとして活躍しています。サネの支援の大きな特徴は、時間をかけて子ども達に寄り添い、人への信頼感、学ぶ姿勢を育て、やがて自分の力で社会に旅立っていくまでを見守るということ。32年の年月を経て、この支援の成果が少しずつ出てきていると感じています。この奨学生事業の支援を受けた元奨学生たちは卒業後どうしているでしょうか。『シリーズ卒業生の今』を通して、元奨学生たちがどんな支援を受けてどう生きているのかをお伝えしていきます。

ー第1回ー パトリシオ・ペレス2004年〜2006年高1〜高3を支援) 

僕は1988年に3人兄弟の長男として生まれました。キトの南部に住み、懸命に勉強をし、学校の旗手を務め(1番の生徒だけがなれる名誉ある役)ました。そして良い成績で高校に入学し、物理数学を専攻しました。奨学生となったのは、高校生になったときです。ソハエスタッフのイヴァンとセシリアが僕の質素な家に家庭訪問に来て、僕は奨学生に選ばれました。こうして新しい旅が始まったのです。新しい学び、新しい人々、そして友情、道徳的支援、勉学への支援、家族のような親密さなど奨学生を力づける感動的な支援に出会うことができたのです。クリスマスカードでは多くの人々の署名入りの素晴らしいメッセージが届きました。特にパドリーノ(文通相手)の東城さんことは忘れられません。

 高校を卒業した僕は中央大学の準備課程に入りましたが、半分が落とされるという厳しい課程で賄賂もはびこっており、これを乗り切って上に進むことはできませんでした。お金もなかったので化粧品を売るアルバイトを始めました。そして1年後に働きながら勉強の道に戻ることを決意し、専門校で経営の勉強をしました。それでも何か足りないものを感じ、中央大学に戻って、目標であった数学と物理の教師になる道を進むことにしたのです。午前中は大学へ、夜は専門校で経営の勉強を続けました。こうして2011年にはトップの成績で経営学課程を終えました。大学も続いていましたが、経済的に大変で教師として教える仕事を始めました。この教師としての仕事を通して、自分にもっと知識が必要だと痛感しました。仕事と勉学との両立は大変で、落第が続きました。たくさんの出会い、挑戦、挫折を繰り返しました。それでも僕は諦めませんでした。かつて高校時代にものを売りながら、あるいは掃除夫として、あらゆることをして働きながらここまできた辛い思い出は私を励ましました。忍耐力が自分の強みだったと思います。      

2017年、ついに物理数学の教師資格を取り卒業しました。『時は来た』のです。2018年教会で我が子の洗礼をしたときに、修士課程への進学を勧められ、進学の決意をしました。こうして20211月に教育、リーダーシップの修士号を取得しました。現在は教師として仕事を続ける傍ら、インターネット技術を教える仕事などをし、長年の夢であった『新時代の技術ツール』という書籍を出版する予定です。(写真上:奨学生の仲間と)         

青年期の夢を信じてくださったサネとソハエ、そして両親が教えてくれた謙虚さと互恵の精神を忘れることはありません。こうして自分の人生を書く機会を与えてくださったことで、自分の辿った道のりを振り返ることができたことに感謝しています。そしてサネの皆さんが卒業の時に送ってくれたカードに、社会のために役立つ人になって欲しいと書かれていた、その願いに答えることができたと感じています。ありがとうございました。

*パトリシオさんは、奨学生に向けてインターネット技術についての講習会をボランティアでやってくださっています。写真上はお子さんと。写真下は卒業時にサネから贈られた手紙。いずれも本人が提供。



奨学生の皆さん、卒業おめでとう!

 


みんなで見守ってきた奨学生11名が全員無事に高校を卒業しました。   
改めて皆様の長年にわたるご支援に感謝します。
SANEは、会員の中の希望者が毎月の手紙の交換を通じて一人一人の奨学生を支援しています。直接できる国際協力、それがSANEの奨学生事業です。
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  卒業生へ贈る言葉         

            奨学生担当 ダーウィン・バスコネス

彼らの成長を数年にわたり見届け、卒業を迎えられたことを嬉しく思います。卒業生は、私たちからの連帯・団結・協力のメッセージ、そしてより公平な社会をつくるために日々努力することを学んだことでしょう。これらは時代を超えても変わらない、いつも人々の心の中にあ価値観と理想です。 

おめでとうございます。幸運を祈り、卒業生へ抱擁を送ります。

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卒業生からのメッセージ

キト支部卒業生 チカイサ・ケリー 

サネの皆様に、ソハエの奨学生全員を代表し、経済的支援と、道徳、信念、価値観と教育に対する支援を与え続けてくださったことに感謝します 多くの奨学生にとって、毎月の奨学金は大きな支えになり、困難な状況から何度も抜け出させてくれました。でも、受け取ったものの中で最も価値があったのは、支援、友情、献身です。皆様からの支援は誰も私から奪うことのできない宝物です。得ることのできた全ての知識は私の中に残り、人生を通じて実践に移そうと思います。尊敬、責任、正義、忍耐といった価値観の教えを通じて、人間として成長する手助けをしてくださいました。 3年間の経験は特別なもので、私の精神と個人主義的な態度を変え、人として成長する手助けをしてくださいました。グループで取り組むこと、全ての人たちの選択肢や判断基準を尊重することの大切さを学びました。 

対価を求めることなく、喜びをもたらすことへの満足感や、その人たちの小さな笑顔を引き出すことのために、人を救うことの重要性を学びました。それは皆様が私たちにしてくれたことであり、私たちは奨学生であることを誇りに思い、感謝しています 貴重な支援をいただき、本当にありがとうございました。 

 

カヤンベ卒業生 クアスコタ・ガブリエル  

初めて他の奨学生との交流会のためにオフィスに行った時、誰も知り合いがいなかったので緊張気味でしたが、時が経つにつれ友達もでき、一緒に経験を共有できるようになりました。 

最初に思っていたことと違い、ソハエに所属するというよりは、親しい友達のグループに入るように感じ、予期しない素晴らしい経験でした。 この経験は忘れられないものになると思います。奨学生みんなとのたくさんの楽しい思い出を心に抱いていきます。 今年はコロナのため会うことができませんでしたが、仲間達に会えることを期待しています。 

後輩へのアドバイスとして、活動に積極的に参加し、協力して、皆と良い友達になってほしいです。卒業後は大学で学び続けたいと思っ
ていますが、大学に入学するのは簡単なことではありませんし、家にも十分な資金はありません。 日本から手紙を送ってくださり、個人的経験や知識を共有し合ったマドリーナに特に感謝します。全ての支援について感謝し、奨学生の友人たちにこれからも会いたいと思っています。