2018年2月26日月曜日

エクアドルから出張報告(2)


19日は保健省、20日は教育省を訪ね、政府の担当の方々に私たちがJICAに提案している事業の内容を説明させていただきました。教育省では新しい政策として打ち出しているTINI(子どもたちが大地に触れ、植物や動物を育てることを通して自然を愛する気持ちを育てようという環境教育の一環)と私たちの事業が通じるものがあるとして、一つの先進例として注目しているとのお話をいただきました。また、21日はカヤンベ市の教育委員会と保健省カヤンベ支所を尋ね、具体的な事業の内容や今回の調査への協力の依頼をしました。どちらも大変積極的に受け止めてくださり、今後情報を共有しながらやっていくことになりました。22日からは実際に学校に行って調査を行っています。先週の木曜日はカンガウア教区のピタナアルト村のルイスウンベルトサルガド校、金曜日はパンバマルカ村のカルロスビセンテアンドラーデ校に行きました。どちらも標高3300mちょっとの標高の自然環境の厳しいところにあります。子どもたちは急な山道を歩いて登校しています。
調査の目的は、子どもたちや学校、地域の状況をより詳しく知ることによって事業の進め方を再検討することと、先生方に理解していただくことです。内容は、校長先生と学校菜園担当の先生へのアンケート調査、インタビュー、子どもたちの体重と身長測定、お母さんへの食事の聞き取り、子どもたちの学校での食の状況調査です。今回の調査の対象にしているのは3歳から6歳(3歳から5歳までの就学前クラスと1年生のクラス)の子どもたちです。私たちは長くこの地域で活動をしてきましたが、実際に子どもたちを対象にこのような調査を行ったことがありませんでした。そのため体重計が正しい数字を示していないことに気づかなかったり、厚い上着を着たまま体重を測ってみたり、基本的なことながら予期していなかったことが色々あって、調査の基礎から学んでいます。修正を重ねながら進めて行きます。改めて地域の貧困の現実に触れ、この状況にどのように切り込んでいくのか考えさせられつつも、校長先生や担当の先生がたの前向きさに可能性を感じています。一人一人の子どもの写真を撮りました。これからの成長を見守っていけたらと考えています。   調査に参加したのは元奨学生(現在大学生)のダヤン、フェルナンダ、そして大学の友達のケビン、SOJAEスタッフのヘルマンと私(杉田)です。この地域では保健省が貧血の調査も行っており、その情報も共有しながら子どもたちにとってより良い食事の実現をはかります。26日から残り4校を訪問します。




2018年2月20日火曜日

エクアドルより出張報告

SANEは、杉田優子を2月16日より3月4日までの予定でエクアドルにJICAの助成で出張させています。今回の出張は現在JICAに事業提案をしている『カヤンベにおける、学校菜園と学校給食を通した子どもたちの学校生活の改善』の計画をより良いものにして行くための調査が主たる目的です。
17日(土曜日)にはこちらのメンバーと、事業計画の確認、6校で行うアンケートとインタビューの内容作成などについて時間をかけて話し合いました。
18日は、カヤンベメンバーと一緒にキトに行き、キト支部のメンバーも含めて事業について共通認識を持つために話し合いました。
19日はJICAエクアドルのアンドレスさん、SOJAEメンバーと一緒に保健省を訪ね、これまでアンドレスさんがメールでやり取りをして来た保健省側のJICA事業窓口の方と直接お会いして事業について説明をしました。保健省でも事業の大切さを理解し、計画通りに開始できるように協力してくださるとのことでした。事業の内容に直接関わる保健省の担当の方と直接お会いできる意義深い機会となりました。
問題は昨年移民に関する法律が変わり、この影響を受けて外国NGOの活動についても法律の変更が必要となったために、昨年夏にはSANEのエクアドルへの登録ができるだろうと予定されていたのが、いまだに待機している状況だということです。この登録ができないとJICAでも事業開始の許可ができないので、事業が承認されても計画通りに始まるかどうか心配されています。
けれども保健省では、たとえ登録が間に合わなくても事業が始められる方法はないかと積極的な姿勢を示してくれました。他の国のNGOの活動もこのために支障が出ているそうです。早期の法律の整備が望まれています。
(写真は保健省にて。左から、JICAアンドレスさん、保健省の担当の3人、杉田、SOJAEアンドレア。他にSOJAEの内田氏、ヘルマン、バレリアが参加)

2018年2月11日日曜日

パネルディスカッションの話題から

2月10日はSANEの活動報告会でしたが、今回は特にカヤンベで行われている学校菜園事業を中心としたSANEの活動に対して4人の方からご意見をいただくというパネルディスカッションを行いました。パネラーは皆さんSANEの活動をほぼご存知ない、この日初めてお会いした方もおいでという挑戦的な取り組みでした。まず杉田優子からSANEの簡単な紹介をさせていただき、その後で2003年から始まった、学校菜園事業の背景、最初は伝統的な穀物の種子の保存と販売を考えていたけれども、次第に子どもたちの
栄養確保へと変化していった経過、今行っているゆうちょ財団助成による事業の状況、そして今回なぜJICAに事業提案をする(行政との連携を考える)に至ったのかを説明しました。つまり子どもたちの栄養状況の改善が緊急で大事な課題となっていること、そのためには行政の理解を得て、より広い関係者とともにこの問題に対処することが重要になっており、また一方でこれまでの経験を活かしてSANEとSOJAEがこの問題に対処する力が付いてきていると判断されたことを説明しました。そして現在提案している学校菜園と学校給食の実施を通して子ども達の学校生活改善するという事業の内容を具体的に紹介しました。
その後、農業専門家として関わる予定のリエラ・麻子、栄養専門家として関わる予定の黒岩晴子からそれぞれの分野の報告をしました。(写真左立っているのが黒岩、一人置いて正面がリエラ、二人の間は荒井さん)

パネラーとしてゲスト出演してくださったのは次の方々です。
*飯能周辺で有機農業に携わる農業家の北村さん(のっぽさん、写真右)
*やはり有機農業に携わる西村さん(Mucuファームさん、写真中央)
*栄養豊かな伝統の雑穀にこだわりを持った食を広める仕事をされている管理栄養士の荒井さん
*自分の想いを音楽を通して伝えようと演奏活動をしている歌手のMireiさん

ディスカッションの中でキヌアの栄養価が高い事が荒井さんから具体的に鉄分の量で紹介され、貧血の多い状況において改めてその価値を認識できました。また、換金できる作物の単一栽培と自給自足型の生活と果たしてどちらが良いのか、そのプラスとマイナスを長いスパンで考えると違ってくるのではないかという北村さんの示唆も興味深いものがありました。さらに雑穀が赤道直下では栽培しやすいことも紹介され、大変参考になりました。調理の仕方についても、その地域に伝わる調理法を掘り起こすことは大きなヒントになるという示唆もありました。
ミレイさんからは、どんな時も音楽を忘れずに生活していって欲しいというお話がありました。
また、SANEの奨学生支援で勉強をした子たちが農業を離れていくことが残念だけれども、ゲストの皆さんはなぜ会社勤めなどを経て農業に携わったり、自分の考えに基づいた生き方を洗濯したのかという杉田の問いかけに、ゲストの皆さんから自分で気づいて選択していくことが重要ではないかというご自分の人生の選択の経験からお話がありました。ゲストの皆さんのように、誇りを持って生きておられる姿を奨学生たちが身近に知ればきっと大きな影響を受けるだろうなと感じました。

後半はMireiさんのコンサートが行われました。SANEでは3回目の出演でしたが、今回のイベントのために作ってくださった『新芽』という曲が披露されました。透明で温かい声が会場に流れ、みなさんうっとりと聞き惚れていました。命、子ども、愛などをテーマにした歌が多く、SANEのコンサートを愛する私たちには本当にしっくりと心に響く歌の数々でした。


その後事務局長の東城より、6月30日に予定されている『日本・エクアドル外交関係樹立記念イベントin飯能』の紹介がされ、司会をやってくださる飯能出身の女優の佐藤康恵さん、実行委員長就任予定の小室舞さんが紹介されました。
 佐藤さんは観客としてお子さんと一緒に参加してくださっていましたが、この会にはSANEメンバーもゲストの方もそして観客の皆さんの中にもお子さん連れが多く、賑やかな、そして温かな雰囲気の中で行われました。SANEらしい、幅広い人々が楽しく、そして深く交流できる会となりました。この会にはゆうちょ財団より助成金が出ています。最後になりましたが、感謝申し上げます。


2018年2月6日火曜日

日本・エクアドル国交100周年記念  パネルディスカッション「農と食」& コンサート「土からのメッセージ」

2月10日(土)午後3時より AKAI Factory  (飯能駅北口徒歩7分)
料金 1000円

SANEの主要事業の一つである学校菜園事業は、エクアドル北部アンデス地域カヤンベ郡の学校で行われています。今回のパネルディスカッションは、本事業について来年度プロジェクト担当をする予定の杉田優子が事業説明を行い、これを出発点として飯能近郊で農業や食に関係する活動をしている方々のご意見を頂きながら、農業の価値とこれからの持続可能なあり方について参加者の皆さんと共に考えて行きます。参加者の皆さんのご経験とエクアドルでの経験の共有を通して、農業を軸に据えた交流の輪を広げ、互いの知見を生かし合えたらと願っています。飯能とカヤンベの市民がこのような取り組みを通してより強いつながりを作っていけるといいですね。
 
今SANEで、来年8月の開始を予定してJICA(国際協力機構)に草の根技術協力事業として『カヤンベ郡の学校菜園と給食の実施を通した子ども達の学校生活改善プロジェクト』を提案しています。この事業の調査のために2月16日より杉田が現地に出張しますが、これを前にこのディスカッションが有益なものとなってくれるものと期待しています。


パネルディスカッションの後、特別ゲストとしてMireiさんが「いのち」「つち」「みず」をテーマに歌を披露してくれます。新曲の披露があるかもしれません。こちらも大変楽しみです。

写真は学校菜園で農業に励む子どもたち