2015年の国連総会では、それまでのミレニアム開発目標から発展した、持続可能な開発のための2030アジェンダが採択されました。これは開発の問題を途上国のことと限定するのではなく、全ての国々の、私たち自身の問題として捉え、みんなが行動に移さなくては次世代にこの地球を渡せないという考えのもとに17のグローバル目標と169のターゲット(達成目標)を定めたものです。
私たち一人一人が貧困や平和や環境の問題に関心を持ち、より良い社会を作るために行動に移していくことが求められています。
より良い社会を築くために何かをやりたい、自分でできることはないだろうか、あるいは、日本以外の国のことを知りたい、日本は世界の中でどのような位置にあるのだろうかと思う人は多いと思います。けれども毎日の生活に追われる中で時は過ぎていき、開発目標などと聞いても別世界のことのように感じられるのが現状ではないでしょうか。
エクアドルの子どものための友人の会 (SANE・サネ) は、埼玉県飯能市という人口8万人ほどの小さなまちで1989年に生まれました。会員は全国にいますが、飯能市を中心に活動をしています。
エクアドルの子どものための友人の会という名前には三つのコンセプトが込められています。
一つが『エクアドル』です。たまたま飯能市に住んでいたホセ・アルメイダというエクアドル人が、エクアドルに起きた地震の復興支援の活動をする中で、貧しかった自分の子ども時代を支えた教育支援(奨学金制度)を子どものためにと考えたことからこの会は始まりました。それまでエクアドルなど聞いたこともなかった人ばかりの飯能市で、見知らぬ国への支援活動が始まったのです。エクアドルとつながりのある数少ない人々、南米に関心のある人々の参加で会は支えられてきました。今、飯能市でも日本の中でもエクアドルという国のことが少しずつ知られるようになりました。
エクアドルは自然豊かな農業国です。アンデスの山間地域の村の学校はSANEの活動地ですが、アンデスの農業や人々の生活の素晴らしさや困難は日本とも通じることも多く、周りの農業家や栄養士の方々も活動に関わってくださっています。(写真はSANEが学校菜園事業を行なっている小学校からアンデスの山々を望む)
二つ目のコンセプトは『子ども支援、教育支援の会』だということです。アルメイダは教育を受ける中で社会を見る視点を学び、自立の力を身につけました。貧しさの中で自信を失っている自国の人々、貧困から抜け出せない人々を教育の力で救いたい、エクアドル社会の基盤を作る若者を育てたい、という彼の願いに、彼の周囲にいる多くの人々が協力の手をさしのべました。教育の力を信じる日本人が多かったからです。30年を経た今、200人以上の子ども達が奨学金で高校を卒業し、大学や専門校を経て、あるいは高校卒業後社会に巣立っています。そして現地の会をスタッフとして、ボランティアとして支える存在になっています。エクアドルの社会のためにたくさんの卒業生が各分野で仕事をしています。(上の写真は小学校の子ども達と、栄養に関する調査活動をする元奨学生)
右の写真は最初の頃の元奨学生の家族です(左端が元奨学生)。彼女は高校卒業後頑張って大学に進み、現在は高校の教師になっています。昨年の出張の時に20年以上の時を経て会いにきてくれました。SANEは会員の中の希望者が一人の奨学生と毎月手紙の交換をして交流します。長い場合は6年間の文通を通したおつきあいをするのです。彼女はその時もらった手紙をお守りのように持っていて、今回見せてくれました。SANEの教育支援は2本立てで、奨学生プログラムと学校プログラムがありますが、そのどちらも一過性ではない、時間をかけて丁寧に信頼関係を積み上げていくものです。
さて、SANEの三つ目のコンセプトは『友人の会』という点です。これは、支援する側の私たち自身も繋がっているということです。奨学生への手紙を書く会員とそれを訳す翻訳ボランティア、担当スタッフ、ツアーに参加した人たち、事務局や各種のイベントに参加するボランティアの人たち、現地のスタッフと日本のスタッフ、もちろん会員や賛助会員としてお金を出して支えてくださっている方たちはSANEの基盤であり、みんなが一つの目標で有機的に繋がっていくことを大切にしています。(写真は2018年ツアーで現地のスタッフと)
最初に書いた持続可能な社会は、市民の参加によってこそ実現可能となります。私たちは小さなまちにある小さなNGOですが、一人一人が持っている、社会のために何かで役立ちたい、社会的な活動に参加したいという思いを叶え、活動の中で学ぶ機会を提供できる場を作っていきます。それがエクアドルと日本の子どもへの貢献となり、平和への一歩となることを願って。
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