2012年5月11日金曜日

開けてはいけない箱ーエクアドルの友人へ

<Aさんからのメッセージ>  
目眩がして一瞬自分が病気になったのかなと思ったのが今回の地震の瞬間でした。

その後でTV を見て驚き、自然の脅威を感じました。

翌日の原子力発電所の爆発を知った時はまるで「映画」の世界に入ってしまったかのような気持ちになり、焦りと困惑、不安と後悔が入り混じったいや~な気持ちになりました。

その時頭に浮かんだのは「水」でした、9か月になる孫の粉ミルク用にと数件のスーパーに走り込み買えるだけ買いこみましたが「いつまで続くのか?」と考えた時に急に無力感に襲われました。

数週間後に「ゼオライト」と言う放射性物質の「セシウム」を吸着する鉱石を買いました。これは長引く災害用に「水」の濾過に使おうと思ったからです、そして次に「放射線測定器」を探しました。三月下旬に入手した時は友人達に笑われました。

そして私の「対原発戦争」が始まりました。仲間と「放射線測定会」を作り、学習会と話し合いの機会を沢山持ちました。色々な場所を測定し、政府の発表が嘘だと言うことを確認し、新聞や、TVからのニュースを吟味する事を始めると「原発安全神話」の存在が分かり、膨大なお金を使って国民を騙してきた政府と電力会社の強かさに驚き怒りました。

自分の街の役所に請願に通いました、しかしその時の対応は信じられないほど関心がなく、何も知らない状況でした。しかし夏から秋にかけて三回、四回と請願し続けてきた成果が表れ、市も学習を始め、行動に移してくれるようになりました。
今後は市民と共同で「安全なまちづくり」をして行って欲しいと思います。

この間学んだ一番大きなことは、「3.11を境に全てが変わってしまい、以前とはまるで違う新たな次元が始まっている」と言うことです。「良い意味」でなく「悪い意味」でのchangeはとっても「危険」で「高いリスク」を伴います。「新たな危険を孕みながらの毎日」が今後数十年、いや百年以上続いて行くことでしょう

エクアドルの友人達に・・・「開けてはいけない箱が有りました」と言うお話をします。

 私達は

「自動車」と言う名の箱を開けると歩かなくなり脚力が弱くなりました。
「テレビ」と言う名の箱を開けたら視力が落ち考える事を失いました
「携帯電話」と言う箱は言い訳を沢山使う嘘つきを増やしてしまい
「携帯音楽器」と言う箱は自然からの音色を遠ざけてしまいました。
「延命処置」と言う医業は人の尊厳を傷つけ
「ジャンクフード」の箱には添加物と言う毒が入っていました。そして
「原子力発電」と言う名の箱には「悪魔」が棲んでいたのです。

 もしあなたたち友人が単なる「憧れ」や「興味本位」でそれらを「欲しがり」「気軽に試したい」と思っていたとしたら立ち止まって考えてください。そしてまわりに沢山ある「見本・サンプル」をよく研究してからにして欲しいと思います。

先人達が受け継ぎ守ってきた「生活と知恵と伝統」を大切にし、なぜ守ってきたのか、誰の為に守ってきたのか、その苦労と喜びを沢山聞いておいてください。

先人達が守ってきてくれた伝統や文化やしきたりを「捨てる」のは簡単ですが「再生」は不可能な場合が多いものです。

エクアドルがゆっくりでも良いから確実に「平和」と「喜び」を皆で享受する、そんな素晴らしい国になる事を地球の裏側から祈っています。


<カヤンベ奨学生カロリーナからの返事>

このお話を読み、私は自分が一瞬日本の人々が生きていかなくてはならない状況に置かれたような気がしました。それは自分にとってすべてのことが大変に絶望感を与えるようなものでした。たとえば、Aさんが地震と津波の後の経験で語ってくれたことは、まず小さなお孫さんの哺乳瓶に使うための水を準備するためにすべての水を買いに行くことを考えたことでした。地震と津波が起きた時は原発が壊れてしまい、それが水、空気、大地を汚染しました。私は放出され、人を死に追いやる可能性のある放射能によって大変な恐怖を感じた人々の思いを想像しました。
そしてまた、その後に起きたことも私は想像しました。何か月か後に放射能の心配はなくなったと言われ、でもそれは本当ではなく、いくつかのグループが何か所かで放射能のレベルを測り、政府のウソを確認しました。Aさんの住んでいる市でも、要求しに行ったら、ちゃんと受け取ってくれなかったけれど、何度も耳を貸すように要求しに行った結果、ようやく注意するようになり、市民のために行動してくれるようになったと言います。

絶対に開けてはならない箱は、どんどん私達をナマケモノにし、弱くする『車』という箱、考える力を失う『テレビ』という箱、自然の音から私達を遠ざける『携帯音楽再生機』営利を目的とし、人間の尊厳を壊す『延命処置』、私たちを中毒にし、健康を壊す『ジャンクフード』そして、悪魔の住む『原発』というものです。ここに書かれていることはすべて、私達に何が起きているのかを気付かせてくれました。もうすでにこのような箱を私達は開けてしまっています。そして、原発という箱を開けるとどのような事が起きるのか教えてくれています。 

<キト奨学生クリスチャン、エディソンからの返事>




Aさん、あなたとご家族や親しい方々がお元気でありますように。

あなたが技術について書かれたことについて、私たちの意見をこの手紙で書きます。人間や自然に対する放射能についての、ドラスティックに状況を変えてしまったというあなたの見解に、私達は明確に同意します。みなさんの国で行っているコミュニティの大きな努力について私達は考えさせられました。この問題に気付くのは遅すぎました。けれども時間は取り戻すことはできません。ですから、私達は回復する方法を探す以外にオプションはないでしょう。みなさんが、未来の若者が前の時代が引き起こした問題によって苦しまないために、この危機を解決し、勇気と気力を持って闘い続けてほしいと願っています。私達は核問題の中心にいる人たちが考えを変えていることをうれしく思います。ですから、私達はこの問題に感謝しなくてはならないでしょう。このような事がないと、世界はエコロジカルでなくてはならないと気付かなかったかもしれません。

親愛なる日本のみなさん、私達はいつもこう考えなくてはならないでしょう。『闘いが大きくなるほど、目標は小さくなる』私達はあなた達の闘いは大きいと感じています。そしてその素晴らしい活動を実現するために、粘り強くあり続けてほしい。ここで私達はその闘いと問題の克服は、世界のみんなの偉大なお手本となるだろうと考えています。私達に手紙と偉大なメッセージを書いて下さってありがとうございます。それは私たちの考え方、世界の見方を変えました。私達は、世界のみなさんと連帯することを学ばなくてはなりません。

みなさんすべてに大きな抱擁を送り、みなさんの闘いがうまく行きますようにと願いつつ、お別れとします。

写真は、メッセージの文章を読みあうキトの奨学生たち。

*ちなみに、Aさんはシンプルライフを自ら実践し、社会を良くするために活躍している気の良い、でも闘うおじいちゃんです。(杉田)

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