2019年1月29日火曜日

SANE、埼玉グローバル賞を受賞

皆様のご協力のおかげで、エクアドルの子どものための友人の会は埼玉グローバル省の受賞が決まりました。

以下産経新聞の記事より抜粋です。

埼玉県は、世界を意識した将来性のある活動や地域の国際化に向けた活動を行う個人・団体を表彰する「埼玉グローバル賞」の受賞者を決定した。「世界への挑戦」分野はクラフトビール「コエド」を醸造し、積極的に海外展開している協同商事(埼玉県川越市)、肩から太鼓を下げて演奏する「かつぎ桶太鼓」の第一人者で、埼玉県上尾市在住の林田ひろゆき氏が受賞した。

 「未来への投資」分野では、エクアドルの中高生を対象とした奨学生プログラムや現地の教師らと連携した学校菜園、栄養改善などの教育環境改善事業を実施したNPO法人「エクアドルの子どものための友人の会」(埼玉県飯能市)が受賞した。

 「地域国際化」分野は外国籍の人らの自立支援を目指して、行政や関係団体などと連携し、協働事業を促進したNPO法人「NGO他文化共生協働センター・川口」(埼玉県川口市)が受賞した。表彰式は2月6日に知事公館で行われる。

2019年1月18日金曜日

キトの奨学生プログラム

SANEには二つの主な活動があります。
一つは奨学生事業、もう一つは教育環境改善事業です。今日は奨学生事業のことをご紹介します。

SANEは元々中高校生への奨学生事業を行う会として設立されました。それは創設者のホセ・アルメイダ(通称ぺぺ)自身が貧しい家庭に生まれ、自ら働きつつ奨学金を得て大学まで卒業した経験があり、奨学金事業への信頼感(教育を受けることによって人は変わるという確信)があったからというのも理由の一つです。日本人にも奨学制度への支持はありました。支援している子どもが誰なのか顔が見えること、その子どもが高校卒業できるように支援するということがわかりやすいこと、学校教育への信頼感などがその理由でした。これは基本的に今もこの事業を支える考え方となっています。

奨学生プログラムは一人一人の子どもに長い時間をかけて、学習支援、社会の見方を学んだり、自分を知り自信を持って生きていける力をつける毎月の講座、日本の会員との毎月の文通などを行なっています。
今回は現地でどのようなことを行なっているのかご紹介します。
上の写真は、キトとカヤンベの奨学生たちです。彼らは時折交流をします。異なる地域の奨学生たちが交流することは互いの理解のために貴重な機会となっています。カヤンベの奨学生の中には卒業をしてキトの大学に進学する子もいます。近いとはいえ文化の違いや、初めての土地での生活の中での厳しい大学生活はカヤンベの子どもにとっては大きな試練の時です。そんな時にキトの仲間たちは大きな支えとなります。


これらの写真は奨学生を対象とした講座の様子です。講座のテーマは多様です。ドラッグやアルコール依存症などの怖さを知る講座、救急救命の方法、自己肯定感を待つこと、ジェンダーやセクシュアリティなどなど。多くは参加型で互いに話し合ったりグループに分かれて意見を出し合ってまとめて発表したりします。

SOJAEの事務所は日本人補習校の中にあります。ここはかつてはエクアドル在住日本人の子どものための学校でした。日本文化の環境の中で講座も行われます。そして日本文化も学びます。多くの子どもたちは見も知らぬ遠い国である日本の人たちが自分たちを支援してくれていることに対して深い感謝の気持ちと関心を持っています。中には日本語を学んでいる子どももいます。
もちろん、日本人のパドリーノ・マドリーナ(文通相手。エクアドルではパドリーノ・マドリーナは親代わりの存在の人を示しますが、SANEでは手紙を書く相手を指します。)との文通の中で、日本のことを色々と知っていく子どももたくさんいます。

この奨学生プログラムの中で活躍しているのが、卒業していった元奨学生たちとハンスザイデルというドイツのNGOで奨学金を得ている大学生ボランティアです。写真のような講座のほとんどは、ハンスザイデルのボランティアが無料で行なってくれています。彼ら自身が経済的に大変な家庭で育っており、ドイツの奨学金で大学で学んでいます。この奨学金を受けるのは難しいのですが、SOJAEの元奨学生たちも何人か選ばれています。SOJAEの卒業生は学業への姿勢ができているとハンスザイデルの担当者から褒められてます。

また、一人一人の奨学生にチューター(世話人)が決まっていて、これを担当しているSOJAEメンバーの多くが元奨学生たちです。このチューターは奨学生の家に家庭訪問をしたり、相談相手になります。さらに、講座の時にファシリテーターとしてあるいは助手として活動してくれています。
この卒業生の姿が後輩の奨学生にとっては何よりの憧れの対象となります。
左の写真の中でもたくさんの卒業生が一緒に活動しています。その多くは大学生ですが、教師やNGO職員となった社会人メンバーもいます。

私たちの奨学生プログラムは日本人会員との毎月の手紙交換(文通制度)も含めて、家族のように奨学生たちに寄り添って、時間をかけて育てていく事業なのです。

親たちも集まって作業をしたり、会合を持ちます。時には保護者の相談を受ける時もあります。青年期の彼らの中には親との関係がうまくいっていない場合もあります。そういう時は親子両方に話を聞きながらアドバイスをしていきます。

これまでのプログラムによる卒業生は約230人を超えました。多くの卒業生が社会に出て活躍しています。また、大学生もたくさんいます。家庭が貧しいために進学できない場合もありますが、それぞれの子どもが自分らしく自信を持っていきていけるように支援しています。
最後の写真は昨年の卒業生(右)と、そのチューターを務めた元奨学生です。こうして自分を育ててくれた人々への大きな信頼感とともに巣立っていくのです。そのことが厳しいこれからの生活の中で力となっていってくれるでしょう。

この事業が始まる時は、不安や抵抗感もありました。例えば学校支援となると支援の対象が広く、個人に限られることはありません。みんなに平等に行き渡る感じがあります。けれども奨学生支援は限られた中高校生を対象として、長い期間をかけて行うことになります。支援によって一人の人にどのような影響をもたらし、それが個人の成長と社会にどのような影響を与えるのかはすぐにわかることではありません。高校卒業が、その後の就職や進学に力となり、個人の幸せにとって効果があることはある程度は予想できますが、SANEのように対象者が35人と限られている場合、それが社会のより良い発展にどれほどの効果があるのかはそう簡単に評価ができないとも言えるでしょう。けれどもSANEの場合、大きな規模の支援はできないからこそ、少ない人数でも一人の子どもに時間をかけて関わっていくことで確実な何かが得られる可能性も出てくるのかもしれません。
そして、30年の時間を経て、多くの卒業生が活躍する姿を見ると、彼らからもう一つ支援の輪が広がっていると感じます。

2019年1月13日日曜日

2月から始まるJICAプロジェクト

色々な都合で遅れていたJICAプロジェクトはようやく2月から始まります。
このプロジェクトの概要をお知らせします。

事業名:
 エクアドル共和国ピチンチャ県カヤンベ市の学校菜園と学校給食の実施を通した子ども達の学校生活改善プロジェクト

事業の背景と必要性:
 エクアドル共和国の対象地を含む周辺地域での2016年の貧困率は52.6%に上っています。本事業の対象地であるピチンチャ県カヤンベ郡の2つの教区は、先住民率が高い地域であり人々の貧困状況は特に厳しいものがあります。標高の高い(3000m以上)遠隔地に点在する村が多く交通の便も悪く食生活も偏っています。子ども達は栄養不足、炭水化物や脂肪に偏った食事のために貧血が多いことが懸念されています。このような状況に対応するため政府は効率の良い栄養添加シリアルバーと乳飲料を配給するようになりまし。しかしこの時期の子どもは栄養必要量が大きいことや、子ども達の多くが朝食を摂らずに1時間以上歩いて登下校しており、子ども達が健康に生活するための栄養価としてはなお不足しています。保護者の栄養の知識や食への意識を育て、学校菜園への農作業参加、給食の調理、給食費を払う、食材の提供など、それぞれの地域にあった形での保護者の参加を促し、伝統作物や新鮮な葉物野菜などの食材による満足な栄養を摂取できる給食を安定して提供することで、子ども達が空腹を感じることなく健康な学校生活を送れるようになることは、子ども達はもとよりその家庭にとって切実なニーズとなっています。(写真は給食の準備をするお母さん)

プロジェクトの目標:
 対象校において学校菜園と学校給食の実施により、子ども達が栄養面でより健康的な学校生活を送れるようになる。

対象地域と対象者:
 カヤンベ市カンガウア地区およびオルメド地区の6村の小学校の、3歳から12歳までの子どもたち約800人。


目指す成果:
(1)  持続可能な学校給食の実施のための協議会が事業実施校6校において、また、委員会が各学校において組織され、教師や保護者が自主的に動くようになる。
(2)  子ども達の食の改善のために、対象校の学校菜園の実施とその収穫物の給食への使用が
促進される。
(3)  対象校の子ども達の栄養状態が改善される。
(4)  事業の成果を関係機関と共有することで、この事業の成果と課題を共有し、より広い地域での学校給食の定着に向けた動きが始まる。
                 (写真は学校菜園で仕事をする保護者と子ども達)

計画されている活動:
(1)  学校給食の実施とそれを目指したプロセスを定着させるための、6校合同の学校給食連絡協議会と各校での学校給食委員会の設置と定期的な開催
(2)  食への理解と学校給食実施を支えるための学校菜園の実施を目指した、保護者や教師等を対象にした農業、栄養をテーマにした講座の実施
(3)  子どもの栄養についての認識を高め、学校給食の質の改善を目指した、保護者を対象にした調理実習の実施や、給食の記録を支援する
(4) 報告会を行い、事業についての意見の交換と成果の共有をする

実施期間:2019年2月ー2022年1月

事業費概算額:約1千万円(3年間)

スタッフ:
【日本側】
プロジェクトマネジャー1名、経理、
現地指導者育成担当1名、国内経理
補佐1名、
短期専門家2名(農業、栄養)
【エクアドル側】
 現地業務補助員2名、現地調整員1名、
アドバイザー1名
(写真は給食を分けるお母さんと
受け取る子ども)



2019年1月12日土曜日

エクアドルの子どものための友人の会とは

2015年の国連総会では、それまでのミレニアム開発目標から発展した、持続可能な開発のための2030アジェンダが採択されました。これは開発の問題を途上国のことと限定するのではなく、全ての国々の、私たち自身の問題として捉え、みんなが行動に移さなくては次世代にこの地球を渡せないという考えのもとに17のグローバル目標と169のターゲット(達成目標)を定めたものです。
私たち一人一人が貧困や平和や環境の問題に関心を持ち、より良い社会を作るために行動に移していくことが求められています。
より良い社会を築くために何かをやりたい、自分でできることはないだろうか、あるいは、日本以外の国のことを知りたい、日本は世界の中でどのような位置にあるのだろうかと思う人は多いと思います。けれども毎日の生活に追われる中で時は過ぎていき、開発目標などと聞いても別世界のことのように感じられるのが現状ではないでしょうか。

エクアドルの子どものための友人の会 (SANE・サネ) は、埼玉県飯能市という人口8万人ほどの小さなまちで1989年に生まれました。会員は全国にいますが、飯能市を中心に活動をしています。
エクアドルの子どものための友人の会という名前には三つのコンセプトが込められています。
一つが『エクアドル』です。たまたま飯能市に住んでいたホセ・アルメイダというエクアドル人が、エクアドルに起きた地震の復興支援の活動をする中で、貧しかった自分の子ども時代を支えた教育支援(奨学金制度)を子どものためにと考えたことからこの会は始まりました。それまでエクアドルなど聞いたこともなかった人ばかりの飯能市で、見知らぬ国への支援活動が始まったのです。エクアドルとつながりのある数少ない人々、南米に関心のある人々の参加で会は支えられてきました。今、飯能市でも日本の中でもエクアドルという国のことが少しずつ知られるようになりました。
エクアドルは自然豊かな農業国です。アンデスの山間地域の村の学校はSANEの活動地ですが、アンデスの農業や人々の生活の素晴らしさや困難は日本とも通じることも多く、周りの農業家や栄養士の方々も活動に関わってくださっています。(写真はSANEが学校菜園事業を行なっている小学校からアンデスの山々を望む)

二つ目のコンセプトは『子ども支援、教育支援の会』だということです。アルメイダは教育を受ける中で社会を見る視点を学び、自立の力を身につけました。貧しさの中で自信を失っている自国の人々、貧困から抜け出せない人々を教育の力で救いたい、エクアドル社会の基盤を作る若者を育てたい、という彼の願いに、彼の周囲にいる多くの人々が協力の手をさしのべました。教育の力を信じる日本人が多かったからです。30年を経た今、200人以上の子ども達が奨学金で高校を卒業し、大学や専門校を経て、あるいは高校卒業後社会に巣立っています。そして現地の会をスタッフとして、ボランティアとして支える存在になっています。エクアドルの社会のためにたくさんの卒業生が各分野で仕事をしています。(上の写真は小学校の子ども達と、栄養に関する調査活動をする元奨学生)
右の写真は最初の頃の元奨学生の家族です(左端が元奨学生)。彼女は高校卒業後頑張って大学に進み、現在は高校の教師になっています。昨年の出張の時に20年以上の時を経て会いにきてくれました。SANEは会員の中の希望者が一人の奨学生と毎月手紙の交換をして交流します。長い場合は6年間の文通を通したおつきあいをするのです。彼女はその時もらった手紙をお守りのように持っていて、今回見せてくれました。SANEの教育支援は2本立てで、奨学生プログラムと学校プログラムがありますが、そのどちらも一過性ではない、時間をかけて丁寧に信頼関係を積み上げていくものです。

 さて、SANEの三つ目のコンセプトは『友人の会』という点です。これは、支援する側の私たち自身も繋がっているということです。奨学生への手紙を書く会員とそれを訳す翻訳ボランティア、担当スタッフ、ツアーに参加した人たち、事務局や各種のイベントに参加するボランティアの人たち、現地のスタッフと日本のスタッフ、もちろん会員や賛助会員としてお金を出して支えてくださっている方たちはSANEの基盤であり、みんなが一つの目標で有機的に繋がっていくことを大切にしています。(写真は2018年ツアーで現地のスタッフと)
最初に書いた持続可能な社会は、市民の参加によってこそ実現可能となります。私たちは小さなまちにある小さなNGOですが、一人一人が持っている、社会のために何かで役立ちたい、社会的な活動に参加したいという思いを叶え、活動の中で学ぶ機会を提供できる場を作っていきます。それがエクアドルと日本の子どもへの貢献となり、平和への一歩となることを願って。


2019年1月3日木曜日

新年明けましておめでとうございます!

昨年はSANEの活動、日本エクアドル国交100周年記念イベント、エクアドルツアーなどに多くの方にご参加、ご協力いただき、大変ありがとうございました。
SANEは今年で30周年となります。JICAに提案した事業も始まり、新しいSANEの姿を模索する歩みを進めています。どうぞ、今年もよろしくお願いいたします。