2017年3月21日火曜日

SANE、SOJAE奨学生事業(カヤンベ)


 今回の出張ではキトとカヤンベの奨学生に活動の様子を見せてもらい、一人一人に話を聞かせてもらったあと、保護者との懇談も行いました。
奨学生プログラムもキトとカヤンベではかなり違いがあります。キトは首都であり、対象地域がかなり広いことや、経済的に困難な子どもたちではあっても都会に住んでいるのに比べ、人口が8万人ほどのカヤンベは地域との結びつきがあること、農業地域であることといった背景の違いがあります。従って奨学生の選考の基準や毎月の奨学生講座のあり方にも違いがあります。

カヤンベの奨学生は現在18人います。奨学生たちに将来何になりたいのかと聞くと、警察官になりたいという答えが多く返ってきました。その理由は短い期間で働けるようになり、給料も良いからだろうと奨学生担当のダーウィンは言います。経済的に困難を抱えた家庭の子どもが多いことが大きな理由になっています。実際には警察官になる道も競争が激しく、希望が叶えられる確率は低いものがあると同時に、彼らにとってそれが一番良い道なのかどうか、その選択肢しか見えていないことに不安がよぎります。
奨学生事業は、公正な社会、豊かな社会を築く主体になってほしいという願いから行われているのですが、具体的にはどうなってほしいという期待が私たちにあるのでしょうか。警察官になりたいという子どもたちを前に少し考えてしまいました。
カヤンベは豊かな農業地域です。中心地は大きなバラの農園のビニールハウスが多くを占め、多くの人が農園で働くことで収入を得ています。その影で農業は縮小し、伝統作物も消えつつあります。自給自足に近い生活をしていた頃と比べて、現金を得ることが重要になった結果食生活がかえって貧困になっているのが現状です。農業=貧困というイメージが強く、農業の大切さが顧みられることはほとんどありません。教育の機会を得ることが農業から抜け出す一つの手段となっています。奨学生プログラムの現実もそうなってしまっていないか?それで良いのか?という一つの疑問がわき上がってきます。
一方で、カヤンベ支部は学校菜園に取り組み、伝統農業の回復、それによる子どもたちの栄養改善を目指しています。それでいながら奨学生事業はその逆の方向に行っているのではないのか、この点について出張の中で現地スタッフと議論をする機会を得ました。ボランティアスタッフの一人のアンドレアは栃木県にあるアジア学院で9か月の農村リーダー研修を受けました。その中でアンドレアは農業の大切さを理解し、農業国である自分の国に大きな自信を持ちました。しかし一方で、農民たちの経済状況は劣悪です。作物の値段は安く働いても働いてもその見返りは期待できない仕組みになっています。奨学生担当のダーウィンは自分の経験からも、奨学生の親たちの大変さを見てきた経験からも、この国で農業をやれとはいえないと言います。
奨学生に農業を生業にするべきだと言うことはできません。でも少なくとも彼らに農業の大切さを理解し、今の社会の仕組みの問題点を知り、どうして行けば良いのか考える機会を持ってほしい。日本でも若者たちが大学を出ながらも農業に意味を見いだし、取り組む例が出てきている、そしてそれを支えようとする市民社会が形成されてきていると話をしました。それは遠い理想の姿かもしれませんが、そうだとしても忘れてはいけない方向性だと考えるからです。
議論の末に、今後のカヤンベの奨学生講座のテーマに農業を掲げることになりました。理想と現実の狭間で若者たちに何を伝えるのか難しい取り組みですが、実際にこの分野で努力を続けている現地の方々を講師に迎えて、学校菜園の現場にも出向いたりして奨学生に新しい視点を育ててほしいと願っています。同時に、進路選択の多様な可能性についても多くの卒業生の経験を知らせることで伝えていってほしいものです。

写真は上から、奨学生との交流、保護者との懇談の様子です。

カヤンベ、ペシージョのミレニオ学校を訪ねて

今回のカヤンベ訪問で、ミレニオ学校を訪ねることができました。
ミレニオ学校は、正式の名前はUnidad Educativa del Milenio(UEM) で、政府の方針で教育改善のために主として地方に建設された大規模校です。カヤンベではペシージョに建設され、2014年に開校されました。
政府の方針で、他の機関が教育に介入することは難しかったのでなかなかこうした学校を訪問することはかなわなかったのですが、今回JICA(日本の国際協力機構)の協力で訪ねることができました。
最初にカヤンベ教育委員会を訪ね、今回の訪問の目的を教育長にお話しさせて頂きました。主としてJICAの協力隊派遣の可能性を探るというのが今回の訪問の名目になっていました。私たちの会の説明もさせてもらい、長くカヤンベで活動してきた会として何ができるのか実情を知りたいとお話しさせて頂きました。
私はまだ開校前、建設中に訪ねたのが最後で、開校後は初めての訪問でした。時間が遅かったため、子どもたちは下校後で、校長先生や他の何人かの先生方にお会いできただけでしたが、それでも大変貴重な訪問になりました。
先生方は子どもたちのことを心配しており、全生徒615人(3歳〜高校2年生)のうち、70%が経済的な困難を抱えていること、約20%の生徒が朝食抜きで来ていると話されました。この学校には15の村から子どもたちが通っています。中には1時間半かけて通って来る子どももいて、学校が7時半に始まるので6時には家を出る必要があります。朝食抜きで来る子どもたちは空腹を抱え授業に集中できないと心配していました。
授業は13時半に終わりますが、この間におやつとして政府から支給される牛乳とシリアルバーだけしか食べるものはありません。これは直接質問できなかったのですが、おそらく外から軽食を売りにくる人はいるのでしょうが(どこの学校にも25セントで家で作ったものを売りにきている人がいます)、買える子はまだ良いのですが、そうでない子は3時頃に家に帰るまで空腹状態が続きます。
 学校菜園の話に先生方は大変大きな関心を寄せてくれ、学校の広い土地を案内してくれました。この土地が先生と子どもたちの手で農地に変わり、子どもたちのための給食を提供できるようになる日が来ることを願っています。


写真は上から
教育委員会、ミレニオ学校の校長室、ミレニオ学校、ミレニオ学校の幼児校舎、学校の土地


キト奨学生、保護者との会

出張の機会を活かして、3月12日にキトの奨学生、保護者との会を持ちました。SANEの財政困難という事情によって、赤字運営をしていたSOJAEは、日本人学校に事務所を移しました。日本人学校は中心地から約1時間、南部に住む子どもたちにとっては2時間かかる場所にありますが、これによって事務所の賃貸料がかからなくなり、SOJAEの赤字が解消されました。ただ、奨学生にとって事務所は気軽に立ち寄れる場所だったのが、なかなか行けなくなってしまい、心配される面も大きいのが現状です。
キト支部ではボランティアメンバーたちが一人一人の奨学生の担当をし、3か月に一度の割合で家庭訪問をして状況を把握し、問題があったら解決のためのアドバイスをしていくという体制を作りました。
今回は、このような中での訪問でした。
当日は日本人学校にほとんどの奨学生と保護者が集まりました。
奨学生との会では、日本でのSANEの活動や日本文化について話をし、一人一人と会話をしました。特に何のためにSANEは彼らを支援しているのかを知らせることは大事なことでした。SANEのメンバーは宗教上の理由でも、お金持ちだからでもなく、教育の力とSOJAEのメンバーに信頼を置いて、将来一人一人の奨学生たちが社会に出て、その役割を果たしてくれること、共に公正な社会の構築のために働いてくれることを願っています。そして奨学生時代の強い絆が多くの卒業生を支え、卒業後も後輩のためにボランティアとして残っているのです。
そんな話をさせてもらいました。また、日本がどこにあって、どんな国なのか、日本語の話などもしましたが、中には何人か日本語に興味があると応えてくれた奨学生もいました。奨学生たちはこの日のために踊りや劇を準備していてくれて、一緒に楽しむことが来ました。
午後は保護者との会がありました。これは初めての試みでしたが、好評でした。今後は保護者同士のつながりを持つことや、保護者向けの講座の希望も出ました。また、保護者自身もSOJAEのために何かできたらという提案もありました。
最後に、女性の日にちなんで元奨学生のディエゴがバラの花を一人一人のお母さんたちにプレゼントするというサプライズがあり、和やかな雰囲気のうちに会合は終わりました。
それぞれの奨学生たちの持っている事情は厳しいものがありますが、キト支部の不断の努力で彼らを支え、奨学生たちがその中で成長していってくれることを願って一日を終えました。



2017年3月20日月曜日

カヤンベで日本文化紹介イベント開催!


19日(日)にカヤンベにおいてSOJAE(SANE) 奨学生と卒業生による日本文化紹介イベントが中央公園の正面ステージで行われました。朝のうちは雨でしたが、その後晴れ間も見えるようになり日曜日ということもあって多くの人が公園に訪れました。初めての開催でしたが、たくさんの方が関心を持って私たちのテントに脚を向けてくれました。
 このイベントのために、日本からも多くの人が協力をしました。飯能市のにこにこハウスのみなさんは、飯能市の観光マップを作り、ポスターも準備して下さいました。
自由の森学園のスペイン語クラスの生徒たちは、宗教、日本の色、出汁、パン、ラーメン、そば、折り紙、鉄道などのテーマで日本紹介パネルを制作、その他にも折り紙やミニチュアの着物、日本の景色の写真や絵はがきの寄付がありました。杉田優子の出張に合わせて企画され、スーツケースにいっぱいの荷物がカヤンベに届けられました。

カヤンベでは奨学生たちが、上を向いて歩こうの歌を練習したり、届いた日本紹介の展示作品を見ながら、それぞれ担当を分担し、訪れた人々に説明をしました。
また、元在エクアドル日本大使の小瀧さんからSOJAEの農業技術者であるヘルマン・リコに託された蕎麦の種はカヤンベの学校菜園で見事に実をつけるようになり、今回のイベントではクッキーにして販売されました。

クッキーは小瀧氏のレシピで元
 奨学生のアンドレア.コヤギージョが作りました。とても美味しいと評判でした。
さらに、杉田優子が和紙に筆ペンで希望者の名前や日本語を書き、これも販売されました。多くの人が日本の字の美しさに感嘆の声を上げていました。
このようなイベントが日本とエクアドルの人々の協力で成功したことは素晴らしいことでした。
後の反省会では、奨学生たちから、日本文化に関心を持った、人前でしゃべることへの恐れがなくなったなどの感想が出され、今後も継続して行いたいと話し合いました。


2017年3月19日日曜日

学校菜園事業校での給食2ーウンベルト・フィエロ校

こちらはサンパブロウルコ村のウンベルト・フィエロ校の様子です。この学校でも昨年は牛乳で政府配給のポタージュを溶いた程度のものしか出せていませんでしたが、今年はほぼ毎日このような給食を用意できているとのことでした。
サラダ、スープなど、子どもたちがたっぷりともらっています。
お母さんたちが給食室で準備し、外で子どもたちに配っています。
子どもたちは長い列を作って順番にもらっていました。
できたての温かいスープ、とても美味しそうですね。

この学校の菜園も大変よく整備され、多くの種類の野菜や穀物、ハーブなどが育っています。

学校菜園事業校での給食ーラファエル・コレア校

3月8日から20日の予定で杉田優子がエクアドルに出張しています。
今回の出張で、カヤンベのいくつかの学校を訪ねましたが、作年よりも安定して給食が提供できている様子が分かり、大変うれしく思いました。
これは、学校教師と保護者の協力によるものです。学校菜園の作物も子どもたちに提供され、政府配給のシリアルバーと牛乳では足りない栄養がこれによって満たされています。
写真はアソシアシオンピタナ村のラファエルコレア校の子どもたちです。スープのジャガイモなどの野菜がおいしそうですね。
9日にJICAエクアドルの職員の方、現地のSOJAE(ソハエ)担当者のヘルマンと一緒に訪ねました。この学校の菜園は子どもたちと先生方の努力でよく整備されていました。