2020年12月20日日曜日

エクアドルのCOVID-19と学校の状況

 エクアドルのCOVID19感染者数は増減を繰り返しながらも、日本でもニュースになったピーク時の30%程度になっているようです(12月18日754人coronavirus en Ecuador)。一番多いのがSANEの活動地でもあるピチンチャ県です。人々の間にはまだ強いコロナウイルスへの恐怖心があります。

政府は現在のところ来年1月から通常の学校での授業に戻る準備をするようにと伝えたようですが、そのためには定められた基準をクリアしなくてはなりません。生徒はマスクの着用はもちろん、各自が消毒液を持参すること、学校も手洗い場の設置や消毒など細かく条件が決められ、その上で保護者が子どもを学校にやることに同意する署名が必要です。スタッフのダーウィンはカヤンベ市の中心部にある大きな高校の教師をしていますが、24名ほどのクラスの中で子どもを学校にやることに同意しているのは3人だけだと話しています。山間部の学校でも実の事業校6校のうち3校は教師と保護者は子どもをできるだけ早く学校にやる事で一致していますが、残りの3校は保護者が反対しているそうです。背景には保護者と学校との信頼関係や、保護者にかかってくる経済的負担(マスクや消毒液を買うためのお金)の問題があると推察されます。

それでも、先日6校に肥料が運び込まれ(写真上)、保護者や先生方が学校菜園で仕事をしました。子ども達が学校にくる日のために、菜園での活動が始まっています。

この間、大和証券福祉財団の助成、彩の国さいたま国際協力基金による耕運機の導入(写真下)、ビニールハウスの改修、水道管の設置など学校の先生方も保護者も学校菜園の充実のために休まず仕事をしてきました。1月には学校に子ども達が戻ってこられるようにと願っています。

SANEはここ数ヶ月、コロナ追加事業についてJICAとの交渉を重ねてきました。やっと最終段階を迎え、来年早々には衛生講習会、調理講習会、手洗い場の設置などの事業が実現しそうです。事業の正式決定がされたらお知らせします。

2020年12月19日土曜日

SANEとSOJAEの奨学生事業(3)ー奨学生の選考

 現在の奨学生数は36名、キトとカヤンベにそれぞれ18名ずつです。この奨学生達をどのように選ぶのかについてご紹介します。
基本的に奨学生の選考は現地のそれぞれの支部に任されます。共通している選考条件は、①経済的に困っている家庭の子どもであること、②学業に一生懸命取り組み成績も良いこと、③親でなくても良いので保護者がいることです。
①の経済的に困窮しているという、収入の基準は数字で決まっているわけではありませんが、毎年選ばれてくる奨学生の経済状況を見ると大きな困難を抱えた家庭の子どもであることがわかります。10月13日のブログに今年選考された奨学生の紹介が載っていますが、それによると、ベレン14歳の母はシングルマザーでコロナの影響で仕事を失い、収入は不安定です。メラニー12歳は大家族ですが、収入はコロナで失業した母が始めた商売で得150ドルのみ。アンドレス14歳は両親がいますが、タクシー運転手である父の収入は安定せず、母の収入200ドルが頼り。ベンジャミン14歳の母は現在無職で、祖父母の家に身を寄せており、別居している父の収入は300ドル/月。ブリタニ13歳は花卉農園で働く父の収入はコロナの影響で減っているジェニファー14歳は大家族で、建築の仕事をする父と、牛乳の販売をする母収 入は、大家族の生活には足りない。マガリー13歳の運転手の父はコロナで仕事を失い、母も給料が半分になった。という状況です。現在のエクアドルの最低賃金は394ドル。ここからみても大変さがお分かりいただけるでしょう。
②は学校での成績が基準となっていて、学校からの報告で判断されます。奨学生になった後で成績が下がるとスタッフや先輩(元奨学生)が学習支援を行ったり、家庭的な問題が背景にある場合は相談に乗ったり細やかな支援があります。それでも学習意欲を失ってしまう子どもも時には出てしまい、最終的には奨学生をやめてもらうということになる時もあります。大抵は生活状態の乱れと直結することも多く、現地スタッフも日本側も大きなショックを受ける結果となってしまいます。それでも、限られた予算の中から奨学金も出ており、多くのボランティアが無償で仕事をしているので、どこまでフォローするのかを判断する責任もあります。
③は子どもの成長には保護者が必要であり、SANE /SOJAEの支援では家庭の代わりをすることはできないと自覚しているからです。たとえ貧しくてもその子のために頑張っている保護者が一緒に見守っている中で私たちの奨学生支援はあるのです。
選考のプロセスは、学校のカウンセラーからの推薦書(時には直接親からの申し込みもありますが)を各支部のスタッフやボランティアメンバーで読んで、その中から上記の三つの基準で候補者(定員の2倍くらい)を選びます。その後、手分けをして家庭訪問をし、本人と保護者に会って話を聞き、環境を観察します。この結果を元に再び会議を開き、最終選考をするのです。ここでは熱い議論が展開され、現地メンバーは苦渋の決断をします。
こうして選ばれた奨学生は支部の新しいメンバーとして紹介され、活動に参加していくことになるのです。


2020年12月1日火曜日

SANE /SOJAEの奨学生事業(2) 30年以上続く奨学生支援の形

 10人の奨学生を支援することで始まったSANEの活動は、奨学金の授与と奨学生への講座の開催、奨学生同士の交流や現地メンバーの細やかな支え、そして日本人会員との毎月の手書きの手紙の交換が主とした内容でした。

奨学金とこの事業にかかっている現地の経費

奨学金の授与は、月に日本円で2400円。会員の会費は月に3000円が基本でその8割が奨学金に、後の2割が経費にと最初は考えられていました。会員の会費3000円というのは奨学生事業の維持をするために最低必要な額として定められたのです。ただ、月に3000円は大変と感じる方でも参加しやすいように、1000円でも2000円でも何人かが集まって一人の子を支援すれば良いということで、会費は1000円、2000円、3000円と定められ、これは31年経った今でも変わっていません(ただ、開始当初は3000円会員がほとんどだったのですが、現在は1000円会員が半分以上になっています)。奨学金の額は、現在は30ドル(レートにもよりますが日本円にすると3200円ほど)と少しですが上昇しました。これが奨学生達にとってどのくらいの価値があるかというと、学校の授業料は現在無償になっていますが、通学のためのバス代、文具や学校にかかる経費の支払い、現在はコロナ禍でオンライン授業になっているためインターネットの支払いなどで足りない状態です。このため、SANEは支援をしてくださる皆さんに呼びかけて今年度1年間の奨学金の10ドル追加を決めて送金しています。下の写真はSOJAEの昨年度の予算書です。見づらいかと思いますが、SANEからの毎月の予算が2208.3ドルとなっています。今のレートで約23万円です。これ以外に現地の元奨学生からの寄付もあって、事業総額は月に2258.33ドルです。奨学金の他に直接奨学生にかかる費用と人件費や事務所賃貸経費(キトは日本人補修校に間借りをして無料、カヤンベは支部長のビルに安い価格で間借りするなど、多くの方々の厚意で成り立っています)などがかかっています。人件費も含めて破格の安さだと思います(ただし、政府の規定に従っており、ボーナスや退職手当の積み立ても含まれています)。SOJAEは政府に認められた組織なので会計士の雇用も必要です。破格の安さとはいえ、小規模NGOのSANEにとってこの事業がお金のかかる事業だということがお分かりかと思います。


奨学金の資金に対する考え方

会費を奨学金に、そのほかの経費はできるだけボランティアで、という考え方は長く変わらないままでしたが、現在はJICAの事業も行っており、より責任のある活動が増えています。活動を大きくしたいわけではないのですが、安定した会の活動は求められており、活動を支えていくためにはきちんと国内経費や現地スタッフの給与や経費を考えていく必要に迫られています。社会が変わった今、100%無償ボランティアだけで活動を継続していくことに無理が出てきています。会費を奨学金に、という考えで始まった活動ですが、現在は会費は会の土台を支える活動に、奨学金はSANEの青少年育成に期待する人々や団体の寄付で支えていけないだろうかと模索が始まっています。